作品を作る人と言うのはおおむねそれに対し手法という
ものが存在してて、違う作家や違うスタジオで作られた
作品であってもどこかかしこかに似通った作りにまとまって
しまいがち。ちっちゃな頃からアニメばっかりみてきた世代には
もうかけあいの台詞なんてものには「定番」ができてて、それらの
口真似でもりあがっちゃうなんてなことまでトーゼンな風でいて、
なんというか、「突破」するパンチみたいなものにすっかり
欠けているなぁ、とマンネリにウンザリしてみるものの、
たまーにお!って思える作品なんかにであうと
お!オォ!って鼻息荒くなったりして、ああ、
まだアニメはダイジョーブだぁと思える時がある。
そんなとき、ラストクレジット(スタッフロール)をながめて
いるとたいてい同じ名前に行き当たる。
ここ2、3年は「大地丙太郎」「ワタナベシンイチ」という名が
出ていると無条件に「わーい」と面白い作品であってくれるので
安心しまくっておるのですが、そんな中でカントクでもなく、
演出でもなく、威力を発揮している人物が、シナリオの
「黒田洋介」という人物である。ハッ!としたのは「無限のリヴァイアス」
の脚本からで、台詞回し、物語の輪郭の表現が、それまでのアニメと
どうも感じが違い、それも演出・カントクの次元ではなく。どーも
その脚本あたりから作品の色合いがしっかりしてきてるなぁと
予感していた。案の定「トライガン」という作品でもその
作品の使う言葉は明らかに他のアニメと一線を画していて、セリフが
安直でなく、かといって「感情まるまるセリフでポン」という従来の
アニメや下手な小劇場のセリフみたいなものではなく、ある確固と
した土着の、含蓄のある言葉が生成されてるなあと思ったらば
案の定案の定、スタッフロールには「黒田洋介」とある。フム。
その後『R.O.D』『スクライド』『ココロ図書館』など、ヒトクセも
フタクセもある作品には、脚本・黒田洋介とあるのである。
脚本というのは映画では要のものであって、ここを練り込めるか
否かが作品の出来不出来を左右するものであるのに、アニメでは
そこんとこが漫画家まかせだったり、誰ともない無個性な作家
集団だったりと、困惑気味で、軽はずみな脚本がたくさんあったの
ですが、この黒田氏の本はあきらかに出来栄がいい。一般の
作品としてできがいい。
これはラジオドラマの世界ので「じんのひろあき」なる人物と
同じくらい心地よいシナリオを書き続けられる人材なのだ。
もともとストーリー指向の強い日本アニメってものの中で、
物語そのものはもっともっと強化されていいはずなのにーと
感じていたのですが、ゲームやらCGやらやたらめったらに
その映像表現ばかりが発展させられてきた中、こうしたシナリオへの
重きが醸せる人が生まれてきているのは素敵な傾向と思うのです。
黒田氏は「スタジオオルフェ」なるところに属した方らしく、
詳しくはそちらのHPに詳しいでしょうからここでは万歳バンザイ
ばかりを言わせていただくとして、従来の正義感いっぱいの
熱血バカヤローヒーロー像を描かない作家のスタンスはなんとも
心地よいのです。迷って困って決定的な打開策のないなかから
主人公が突破口らしきところをまさぐりながら、やっとこに、
傷だらけで、息も絶え絶えにはい出してくるドラマトゥルギーをば
ボカンとみせてくれる、そう、カタルシル・モリモリンの
ボリュームのあるオイシ〜イ作品を作りだせる希有な作家なのです。
なにかもの作りを嗜好して、いいものに触れたいと思っていらっしゃる
かたは是非にチェックいただきたい人材です。