作成日: 12/03/13
修正日: 12/03/13
停滞・突破・チープ
声なき声は、「ない」のに「ある」ものだ
イノベーションって言葉の意味が分からずにいたので、導入になりそうな本を読んだら、ナルホド
考え方はオモシロイと感じました。私たちの世代は気づけば経済成長に乗っていて、「イチから作り出す」を
強要されないトコロから生きはじめているので、世間に言う「素晴らしい日本」だとか「日本のモノヅクリ」
みたいな綺麗な神話然としたものを鵜呑みにしてしまうと、もうとたんに「自分たちがうまくいかない理由」の
根っこがみえなくなっちゃうなと思います。
わたしたちの先達は、もっと「泥臭い」ところから、今の状況を作って来てくれました。
日本の製品のいくつかは「猿真似」と言われる外国製品の模倣から始まってる訳です。出典部分は
外国で「すでに製品として出来上がっているもの」が洗練されていました。そこへ「一旦チープかも
しれないけれど」という、ニッチな隙間に「ニホン製品」は果敢に挑んでいきました。
「ウォークマン」だの「ラジカセ」だの「ポータブルテレビ」だの、「付加価値を足した」などといいだすのは
おさまりよく売れだしたあとについた単語で、実際のところは「できあがってるものを無理矢理足した」
製品だったはずです。基本的にチープさやニッチさ満載の存在だったはずです。
日本車も、アメリカ、ドイツ、フランスなどの自動車産業が作り上げて来た「ブランド」世界に、
ブランド外のニッチさを抱えもって、突入していく果敢さが、その「生き残るためだけの必死さ」が
あってこそ、「ニホンの車」が浸透した印象があるのです。のっけからウハウハで「いいもの作って来たから」
だけで生き残れて来たみたいな話の方が飲み込みやすいせいか、年を経るごとにそんな話になってきてる。
21世紀に入って、アップルのジョブズさんに日本家電をけちょんけちょんに言われたり、日本のゲームは
ツマラヌ的発言を受けたりしてきたり、車も、携帯端末もと、業界全体がぼろんぼろんに向かってるかのような
印象を受けます。
ここをよーく見ておいた方がいいです。
「うまくいってたはずのもの」が、手のひらを返したかのように「本当はうまくいってませんでした」って
ことが多いと思いません?
オリンパスの「ホントはもうかってませんでした」とか、AIJ投資顧問が「運転資金なくなっちゃいました」とか
なんだか景気よかったはずのものが、順繰り駄目になっていくのではなく、「突然、まるきり駄目でした!」
って感じばっかりです。急に駄目になるはずはないのです。そのいきさつの過程で、必ず破綻に至る前ぶれのような
予兆はあったでしょう。駄目になる兆しを見据えていなかったのだとしたら、それこそ経営者の監督が悪い。
「失敗をするには、失敗の準備をしている」のです。失敗したくて、準備をしているのではなく、
「失敗」ってものを生み出すにも、突然ということはない。順繰り順繰り、周到に準備して、備えて、
ミスを減らして、洗練して、さあ、とやってみたら「失敗したー!」なのであり、準備中は「成功する気まんまん」
だったものが、いざやってみたら「失敗だったー」という「結果としての差」なだけです。
結果が「失敗」なだけであり、やってきた準備は「その失敗」を手に入れるための費やしだったのであり、
ちゃんと用意した部品をそろえてこそ、ようやく出来上がるのです、「失敗」が。
これは力強く備えて仕上がった「成果」であり、準備なしにはなしえなかった、という失敗なのです。
決して「急に失敗した」なんかじゃありません。準備を周到にしています。
「原子力は安全です」に象徴されるように「実はまるきり嘘でした」ってことの連発・連鎖が出てくるようになり、
私はむしろ少し安心しました。無理して「いいとこ見せ続けるのは限界でした」っていうのができなくなる
時代に入った点での安心です。安全、安心を人々に植え付けて、受け入れてもらうことばかりに腐心して
「本当は駄目なところも、危ないところもたくさんある」という正直さはうやむや。
綺麗すぎることばかり言ってた世間は、随分「使いにくいものになった」って思いませんか?
テレビの地デジ化で、私の所有するレコーダーは録画できなくなりました。DVDに焼けなくなりました。
予約できなくなりました。テレビは映らなくなりました。で、「買い直し」をするのではなく、
「見ないことになりました」感が強くなりました。故障も悪さもしてないのに、高額で買わされた機器は
「使えなくなりました」ってことになりました。メーカーは悪くありません。買った人も悪くありません。
将来的には地デジ化は必要です。・・・ほら、誰も悪くない。・・・・馬鹿みたい。
地震が起きて、津波が起きて、原発が爆発して、日本に「侵入禁止」の地域までできてるのに、
「誰が悪いのかすら分かんない」という、この不愉快さ、気持ち悪さ。
東電が悪いんだと政府がいい、国の推進あってこその原子力政策なのにと東電は感じ、電気代は上がり、
払うのは不愉快だと人々は怒る。1年経っちゃったけど、あんだけたくさんいる「国会議員さん」たちの
だれがこの憤りに応えただろう。瓦礫も燃やせない、34万人が「避難しっぱなし」。一斉に曖昧。
これだよ。
まさにこの「誰が悪いかすらはっきりさせない」という「正体のなさ」。
この曖昧さが売りなのが日本人気質の一端かもしれない。
これを許容するというのなら、「停滞」も受け入れるってこと。
「できるだけ早く停滞期間を終わらせる」ことに切り替えて、曖昧さはそのまま、と日本人は
したのだろうか。
なら、そうした、と宣言はすべきだ。
黙ってそう決め込んでるのはフェアじゃない。
「曖昧で行くと決めたので、時間がかかるからね。『早急に』はあきらめてね。
寿命の短い人はごめんね、あんたの死ぬまでに間に合わないからね。」と正直にすべきだ。
で、ないと、基本的に「嘘」を吐いてることになる。
経済は停滞、景気も停滞。放射能汚染も停滞、復興も停滞。
これは「決めて」そうしてる面がある。選んでそうしてる面がある。
「みんなが、なるべく多くの人が文句を言いにくい方の結論」で選んでおさめてる節がある。
そんな消極的な姿勢に終始したまま「口ではいい方向を歌い上げる」というミスマッチが、
いよいよ人々に、言いようのないマグマのような怒りを植え付けてる。そう、植え付けてる。
ガス抜きなんかじゃおさまらない手合いの怒りを植え付けはじめてるのが気にかかる。
韓国が液晶テレビや文化、アメリカがIT業界で「成長」を生み出せはじめているのは、自分たちの
強い部分をしっかり展開していく気概があるからだろう。強い部分が分かってるのは、弱い部分も
把握していて、回避してるか、抑えこんでいるかをするから、強い部分に集中集約できるのだ。
「ニッポン」という大くくりで、「ガンバレ」だとかあいまいなこと言ってる場合じゃない。
ガンバルのは「ニッポン」じゃない。人であり、企業であり、組織、それぞれだ。
「まぁ責任の所在はそれはそれとして、はい、ガンバレ!ニッポン」じゃ駄目でしょ。
分かんないよ。なにがガンバルの?誰が頑張るの?なんなの?ガンバレニッポンって。
わっかんねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーよっ!!!
やめろ、こんな得体の知れない暴力みたいな応援(の、ふり)は。迷惑だ。
的が外れてる。いや、「的を(わざと)(曖昧に)外してる」やり方じゃん。
緊急の時には、緊急の振る舞いに切り替えなくちゃいけなかったのに。
1年を、なんて無為にすごしてしまったんだろう。なんて力ない国だと多くの人に知らしめて
しまったんだろう。
日本経済が黎明期に入った頃の「チープさ」を怖れない果敢さとか、無謀さとか、挑戦というのは
一人の開拓者とか、それを手伝う人たちとか、具体的な「頑張ってる人」が負けるもんか、負けるもんか、
へこたれるもんか、泣くもんか、っていう決意がみなぎってた。「みんな頑張ってた」なんて
いい加減なモンじゃないよ、頑張ってた人ははっきり分かってた。決まってた。みんなが頑張ってたんじゃない!
やってないやつはやってないよ。怠けてたよ。いなかったよ。頑張ってなんかいなかったよ。
見えない壁みたいな「もっさりしまくった」ものへ突入を繰り返した先達たちが、へこたれずに
リトライを繰り返して、小さな突破口をこじあけ、ねじ込み、食い下がり、よじのぼり、叩かれ、
罵られ、差別され、歯を食いしばり、がんばって、頑張って、ぎりぎりの資質を全部つぎ込んで
上り上げ、突き抜けて、ようやくの思いで、たどりついた「壁の向こう側」だったんだ。
そこに「立ってる」ことが「当たり前」なところを「スタートライン」にしてきた私たちは、
先達の遺産を喰い散らかしてしまってるだけの「馬鹿な道楽息子」でしかないのだろうか。
すごいもので、きれいなもので、力があって「そこに至った」んじゃないよ。
なんにもないから、渇望して、「ようやく」でそこにいるんだよ。ぎりぎりなんだよ。
余裕ぶっこいていられるところじゃないんだよ。
だからたとえチープでも、みすぼらしくても、見栄えが悪くても、いいから、
「はっきりそこに向かおう」と力強く言い切る力が欲しいんだ。
こんな時だからこそ。
そのためには、「なにが駄目だったか」「嘘だったもの」「隠してきたこと」をないままにしてて
話ができなんだよ。「ないこと」にしたままで、怪我のないまま、過ごしてられる程、
ノンキな時代じゃなくなってるのに。分かってるのに。
ポピュリズムみたいな平易なシュプレヒコールをヨロシク!っていってんじゃないんだよ。
「地震」と「津波」を喰らって「原発爆発」して「被災」した国なんて、世界のうち日本しか
ねえんだから、ここで凛と立つ姿勢と言葉を持った輩は「ひとりもいませんでした!」で
いいのかよ、ってことです。全世界が見てるのに。
今のところ、全滅です。ちくしょう。悔しいです。
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