作成日: 15/02/28
修正日: 15/02/28
美味しいだけのラーメン屋
旨いのに、不味かった店
そもそも、私は食の冒険というものがからきし駄目な人なのです。
新しい店の開拓というのは実に億劫で、人と入った店で気に入ったものを
何年も何度も利用するくらい。はじめて食べるもので、どうにも口に合わない時には
本当にアゲインストしてみせます(実話あり)。
食べるという事は、とても大事な行為なんですけれど、どうも冒険ができません。
今日は「見つけていないだけで、美味しいのに『行かなかった』だけで味わわずに済ませて
しまうという臆病、なんてのは卑怯なんじゃないか?」などと、こねくりまわしたこ理屈つけて
無理くり気になってたラーメン屋さんに入ってみました。
駅前の、タウン誌などにもたびたび名の出てた店なので、そうそう外れないだろうとタカをくくって
のれんをくぐりました。結果を先にいうと、完全にアウトな店でした。びっくりするくらいに。
頼んだ担々麺は美味しかったのです。まぜ麺ってあんまり食べないんですが、美味しかったです。
美味しいのに、食べ終わって帰宅すると、まるで今日一日を台無しにされたような徒労感に
襲われました。なんでしょこの感覚。
店に入って、まずその雰囲気にのまれました。客席の半分は埋まっているのに、やけに静か。
年配の方や家族連れ、お一人様も混ざって多彩な客層ですが、なんていうんでしょう、
誰も彼もが喋っていないのです。
『?』
そういやのれんくぐった時には、接客のアルバイトのお姉さんがいらっしゃいませって言った
気はしますが、それ以外はテレビの音声しかしない。
厨房の方を見やると、若そうな男ふたりが黙々と仕込んでいる。店内には読み物もなく、
水もセルフ。それはそれでいいんですが、ん、ナンダロ、この雰囲気の妙さは・・・
注文を待つ間に気づいたのは、お昼近くに入って、席も埋まってるのに、「食べてる人」が
ほとんど「目に入らない」ことでした。まばらに、ちょろちょろと食べている「ような」人が
いるだけで、わいわいと食べてる空気が皆無。
「?」
調理があがってくるのが極端に「遅い」店であることが判明しました。一人分をあげるのに
5分10分かかっており、仲間や集団で来てる人にはとにかくまばらに、ひとり一人分だけが
5分おき、10分おきに、ちょろ、ちょろと仕上がる。
恐ろしい事に、それに「文句を言う」お客はいない。
ほう、じゃあそれに見合う旨さってことかね?って思おうともしたんですけど。
餃子に担々麺を私は注文しましたが、餃子が出てくるまでに15分。ラーメンが出てきたのは35分後で
餃子がすっかりひんやりしていました。
給仕のアルバイトのお姉ちゃんは、それを勘付いているようで、お客たちのどこかいらだちを
察した、おびえたような顔つきなんですけど、それもどうやら「いつものこと」っぽいことが
店員たちからの悪びれないしぐさから察しがつきました。
入ってくるお客さんには挨拶はか細く。
それでいてお会計を済ませて出て行くお客には「ありやとやんしたぁぁーー」みたいに、それそこまで
テレビの音声しかこだましてなかった店内に野郎の声で3つも4つも声が上がるのです。
え!厨房にそんだけ人いんの?なのにこんなに静かにしてんの?で、「金払った人が出て行く時だけ大声」なの?
それは「金払って、出てけ!」だけが威勢のいいってことなんだけど。
担々麺は美味しかったです。2度と行きません。
大学生ののサークルみたいでした。他人の気持ちが全然思いやれない店でした。早く滅びろと思いました。
お客もきっと察しのいい人は「とっくに来なくなってる」店なんでしょうね。そういうすえた香りを
店の雰囲気にも、客層にも現れていました。
担々麺は美味しいのに。一度に複数のお客の分ラーメン作ればいいのに。飲食業だけど、サービス業でも
あるのに。こういうのがなんかひどく冷めた気持ちにさせられたがっかり感で一杯でした。
あんまりひどかったので、エッセイにしておこうと思いました。ふう。
こういうの、経験としては好き。自分もそんなことしでかしてないかしら?ってね。
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