作成日: 19/08/12
修正日: 19/08/12
冴えないまんまの進撃
ヤバイTシャツ屋さんとか見てるとひどくデジャヴを感じる件
「ヤバイTシャツ屋さん」の曲を聞いてるとひどく安心してしまうのです。
いけませんいけません。時代を見てない感じがヒットしてくるのです。
どこにも追いつこうとしてない、やりっ放しな感じがいかにも映像学科の
しでかしそうなことなのです。
庵野秀明監督もエヴァンゲリオンで発揮してしまったけれど、「作りたいこと」
をやりきってしまうと、あとのことがあんまり準備もしてないし、おさまりを
つけようともしないのが、いかにも大阪芸大のノリの根っこにあります。
でも勢いだけは「突破」してるのね。その一点に集中してるから。
頭のいいひとは「おさまり」を大事にしてくれますが、どこかに「つかんでなんぼ」
なる魂がうごめくのです。
ゆえに楽しいのです。ゆえに類似品が生まれにくいのです。それもそのはず
「やりっぱなし」なんですから。うふふ。
「ヤバイTシャツ屋さん」でもうひとつ突出してるのが「見栄えなさ」です。
普通の大学生のサークルテンションです。それでいいのです。冴えてないことを
隠しもせず、ルックスあげてくることもせず、流されるべきものにはひょいひょい
ながされてて、抗う様子もない清々しさったら!世の中変えるつもりもなくって
ファッションリーダーのふりも「できない」がとっくに全面に出てる。
コスプレですとか、コミケ、ユーチューバーに感じる「普通の人の台頭」には
常々「華がない」存在が「見られる」側に居る違和感を私は覚えます。
楽しんでる人たちはそれでいいのです。じゃんじゃんやってください。
私個人は突出した華のあるものが、追随を許さない美しさや才覚を当てつけてくる
押力に「ねじりきられる」のが「感動」だと思ってます。ある意味暴力です。
刃物などの切れ味というよりも、爆風などの力づくの押し押しでちょんぎる魅力。
そういう存在は「楽しい」とかいう次元ではなく、知ってしまったらその後の人生の
流れを変えるものです。進路を変更させます。楽しい以上に巻き込まれる類いのものです。
おや、じゃあ先刻から書いてる「ヤバイTシャツ屋さん」は突出ですか?といいますと
いやいや、してないんです、突出。そこが好きで好きで。
ふつうなんスよ。「冴えませんけど」なままですけどなにか?という潔さ。
冴えるつもりなんかもございませんけど?ところで・・・と、この時代に一番
難しくって、一番愉快なことをしてくれているんです。
ネット時代になって「超」のつくトップの優秀軍団と、「超」のつくボトムズ軍団が
できあがり、「圧倒的に肉厚」な凡庸な人々。この中間層にほっとんどのひとが
押し込まれて、優秀にも、下位カーストにもならない、もや~んとした人生くらいしか
予感できない人にとって、この「ヤバイTシャツ屋さん」の在り方には大いにヒントが
あります。
要は優秀にも下劣にも至らなくたって、「オモロイ」だけで際立つポジションが
あるってこと。「不思議な唯一の在り方」とでも申しましょうか。こういうの
見つけるのって、西日本の人に強く根付いてるのね。
東京圏では優秀さ、秀逸さ、洗練などが価値観として尊ばれる傾向が強いけれど、
京都以西、いわゆる「関西弁」使いの人口分布がある語りから西側には、
「物語」や「意味合い」などの「見てくれ以外の魅力」を重宝する傾向が強く
私には感じるのです。
例えるとふくよかな体格の人を「デブ」と笑って諌める人が居ても、関西以西には
どこか「オモロ」かったら、人権がたっぷりあるのです。存在感がユニークで
素敵に扱われる気配が濃厚です。重宝してるものが違う文化があるように思います。
のびのびしてるんです。ひけをとらない、いや、あわよくば人気者です。
「ヤバイTシャツ屋さん」の面白さはこれに乗っかっています。ものすごくふざけてます。
各キャラクターは話すほどに普通です。ノンケです。サイケデリックじゃありません。
言ってしまえばすごい人たちを「うらやましがってる」のです。これは松尾スズキさん
にも同じことが言えます。突出した才能たちを遠くに眺めていーなーって指をくわえてる
姿が、戦略でなく、自然体で正直なのです。つまりそこについての追従も模倣も
早々にあきらめていて、「ユニーク」方面にひたすら「おもしろがって」進むのです。
「ユニーク」で「オモロ」かったら、もうそこである意味「満願成就」もしてる
わけなので、あとは「好きにやる」の度合いの差でしかありません。ですから
たとえ未完成であっても「これでいい」と言いだせる諦観があるのです。
庵野秀明監督作品の「エヴァンゲリオン」などはテレビで「精一杯」を
みせてくれたのですから、劇場版製作を希望したりして、疲弊させる必要なんか
ないんですよ。「未完成」みたいな「完了」なんですから。
これからの時代の人はこうした「ヤバイTシャツ屋さん」の存在の仕方を
旨くエッセンス盗んで生きていけばいいと思います。それはとても愉快なことです。
競いようのないベクトル、線路をじゃんじゃん敷設してゆくイメージですね。
どこまでも交わらず、どこまでも自分勝手。それは「冴えないまんまの進撃」です。
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