かといって、ムヤミに本気でふるまうとすると、実害も
多いものだ。敵意をムキ出しにして挑んでいくことを肯定
してくれるスポーツってものは、思えば奇妙なものだ。
誰かの本気はその本人に留まらず、周りに伝播して、
気ばかり本気にテンションアップしてしまう。本気シンド
ローム。気持ちを高ぶらせたい、と日頃静かに
スタンバっている人の導火線に火をつけてまわる放火魔、
それが本気の威力と思う。
「ロッキー」観て腹筋はじめた人も「あしたのジョー」
みてシャドーボクシングしちゃった人も「ウインブルドン
の伊達VSグラフ」観た人の感動と、なんら本質に
変わりはない。本気ってやつに脳の奥へ細工されて
しまったのだ。いわばロボトミー手術だから、
本人の意志(一番日頃大事に大事にしてる
つもりのもの)ですら、ツイッと横に
おしやられ、本能の命令の方に従っちゃうのである。
やぶれかぶれに良く似てる。
伊達とS・グラフのウィンブルドン、を観て(3)
0ー40にきてたら、しんなりしそうなものだけど、
こっちからトントンに持ち込むくらいまで、しつこく
しつこくポイントをとっていくゲームを二人ともしてた。
特に伊達のしつこさはけだるくなるくらいに、威力満点
でした。たとえ勝ち取れないであろうセットを予感した
にせよ、素直に勝たせてあげないことで、相手は勝手に
イラついてくれる。自然に小さなミスも増える。しつこく
しつこくラリーとデュースの繰り返しになることで、
リード目を持っていたゲームメーカーばかりイラつく
のだ。「負ける」と一言で言っても、相手からネジリとれる
ガッツをネジリとれる分だけごっそりとって負けるなら、
むしろゲームのイニシアティヴは本人が握っている。
「まけ方」が本当に上手い。一人転ぶのではなく、相手を
引き摺り倒して、あわよくば共倒れを狙いまくった、
したたかさのある転び方を心掛けている。
相手にストレスの置き土産を放つ、そうしたチャンスを
生ませるためにも「ねばり」がよいのだ。一度の
チャンスしかなさそーなトコロで、ネバることで
二度のチャンスをつかむとすれば、2倍の倍率に
なったってことでしょ?「ねばり得」な訳よ。
そーゆー訳で、ねばり、は十分武器なのである。
ねばり、はゴネることでストレス土産をより
多く打ち込んでゆける。